ドラゴンボールなどの「東映アニメーション」インオーガニックな成長に挑戦 5年で企業規模を2倍に

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ドラゴンボールやワンピース、デジモンなどの人気アニメを手がける東映アニメーション<4816>は、インオーガニック成長(M&Aなどによる外部の資源を活用した成長)に挑戦する。

これまでM&Aとは縁遠かったが、方針を転換。有望な投資機会を捉え、非連続な成⾧を目指すことにした。

こうした取り組みで、今後5年間(2027年3月期~2031年3月期)で売上高と営業利益を約2倍に引き上げる。

IPや制作スタジオを強化

東映アニメーションは、企業買収の実績が少なく、同社の沿革によると1998年のフィリピンの合弁会社EEI-TOEI Animation Corp.(現 TOEI ANIMATION PHILS., INC.)の子会社化と、2008年の香港の合弁会社TOEI ANIMATION ENTERPRISES LTD.の子会社化の2件に留まる。

一方、売上高は2023年に875億円だったのが、3年後の2026年3月期は880億円を見込むなど、ほとんど伸びが見られない。

この状況を打開し、今後10年で 「世界に冠たる東映アニメーションブランド」を確立するとの目標を掲げ、オーガニック成⾧(内部の経営資源を活用した成長)を基本にしながらも、インオーガニックに挑戦することにした。

今後、海外を含むアニメ作品やキャラクターなどのIP(知的財産)の強化につながる分野や、アニメ制作を行うための制作スタジオの強化につながる分野、さらには既存事業とのシナジーが見込める分野を中心に候補先企業を探索する。

これら領域のM&Aに今後5年間で500億円程度を投資する計画だ。大型投資による経営全体への影響を正しく捉えた意思決定を行うため、委員会による2段階審査を経たうえで、取締役会で審議するなどガバナンス(企業統治)を強化する。

また、企業探索と並行して、M&AやPMI(M&A後の統合作業)などの専門知見を持つプロ人材の採用や専任チームの発足などにも取り組む。

同社ではアニメ産業市場は、作り手不足による製作ラインのひっ迫や、映像品質向上による工数倍増、物価高・人件費高などの課題はあるものの、今後5年間の業界全体の平均成⾧率は10%程度に達すると見込む。

M&Aを活用することで、この水準を上回る年平均17%程度の成長を実現し、2031年3月期には売上高2000億円(2026年3月期見込み比2.27倍)、営業利益500億円(同1.92倍)と2倍前後の増収営業増益を目指す。

2026年3月期は減収減益に

東映アニメーションは、劇場やテレビ向けのアニメ作品などの企画、製作、放映権などの販売を行う「映像製作・販売事業」(売上高構成比37%)と、保有するキャラクターの使用をライセンス許諾しロイヤルティーを得る「版権事業」(同50%)、キャラクター商品などを販売する「商品販売事業」(同9%)、催事イベントやキャラクターショーなどの「その他事業」(同4%)で事業を構成している。

東映アニメーションセグメント別内訳

2025年3月末時点でテレビアニメ作品244タイトル、劇場アニメ作品275タイトル、その他にTVSP(特別番組)などを合わせ、総コンテンツ数は約1万4000本を保有しているのが強み。

直近の2025年3月期はドラゴンボールシリーズのゲーム化権販売、商品化権販売や、ワンピースの商品化権販売などが好調に稼働したことから、売上高は1008億3600万円(前年度比13.7%増)、営業利益は324億3200万円(同38.8%増)と2ケタの大幅増収増益となった。

ただ2026年3月期は前年度に好調に推移した配信権販売やゲームの反動減などがあり、売上高880億円(同12.7%減)、営業利益260億円(同19.5%減)の減収営業減益を見込んでいる。

インオーガニックな成長によってアニメ業界のリーディングカンパニーとしてさらなる成長を目指す東映アニメーションが、最初にM&Aを仕かけるのはどの分野になるだろうか。

東映アニメーションの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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