
【2025年コンテンツビジネス】IP獲得と海外展開が加速か、アニメ・ゲーム軸にコンテンツ制作会社の買収活発

2024年、アニメや映画、ゲームなどのエンターテインメントコンテンツを軸にしたコンテンツ産業の動きが注目された。買い手となるのは、テレビ局や映画会社、大手ゲーム会社。いずれもコンテンツIP(知的財産)を獲得し、ヒット作を創出、グッズ販売やゲーム化、アニメ化などにビジネスを展開して、海外市場の開拓も積極的に進めている。こうしたビジネスモデルのなかで不足する経営資源をM&Aで補っていくのが基本戦略だ。
アニメやゲーム制作を行うコンテンツ制作会社の取り込みが顕著
ビジネスモデルはかねてから変わっていないが、Netflixなどの動画配信プラットフォームの台頭により、クリエーター人材の流動化が始まったこと、また、コンテンツの消費量が増えたことで、人材の需給がタイトになった。こうした流れを受け、ここ数年で起きているのが、アニメやゲームの制作を行うコンテンツ制作会社の取り込みである。
2023年、日本テレビHDがスタジオジブリを買収したのは記憶に新しく、2024年は、東宝によるアニメーションスタジオのサイエンスSARUの買収が発表された。
海外展開の強化では、TBSがコンテンツの販売代理店である米国のBellon Entertainmentを子会社化、東宝は案件を重ねて北米で海外アニメーション作品を配給するGKIDSを買収した。GKIDSは過去に配給した13作品がアカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされ、2024年3月にはスタジオジブリの『君たちはどう生きるか』で初受賞を果たした。GKIDSの買収により開拓の余地の大きい海外ビジネスの拡大を加速させる。
アニメ・映像作品化を目的としたコンテンツIPの獲得でひときわ注目を集めたのは、ソニーによるKADOKAWAへの買収意向だ。12月19日にKADOKAWAの株式約10%を保有する資本業務提携で落ち着いたが、ソニーはかつてのようなエレクトロニクス企業からは一転、コンテンツ、それを生み出すプロダクトとサービス、CMOSイメージセンサーという三つのビジネスレイヤーをなし、コンテンツビジネスを重視する姿勢を見せている。2020年に米通信大手AT&Tの子会社でアニメ配信事業「クランチロール」を運営するイレーション・ホールディングスを買収し、海外でのアニメ配信事業を持ち、家庭用ゲーム機「プレイステーション」を始めとして、コンテンツIPを受け入れる企業へと変貌を遂げているのだ。
ゲームではコンテンツIPの獲得に加え技術力の強化が目的に
大手ゲーム会社でも、海外展開を目的としたコンテンツIPを獲得する動きがみられる。2023年にはセガサミーホールディングスが、人気モバイルゲーム『アングリーバード』で知られるフィンランドのロビオ・エンターテインメントを子会社化。2024年にはサイバーエージェントが『刀剣乱舞』などのIP保有企業であるニトロプラスを子会社化し、ゲーム・アニメ事業の強化を図った。
ゲーム業界では、技術の細分化が進み、新技術への対応を目的としたM&Aも活発化している。大手では、2024年にカプコンが、ゲーム関連のアニメーション制作を手がける台湾のMinimum Studiosを子会社化。家庭用ゲーム事業の長期目標として掲げる年間販売本数1億本の達成に向けた開発力・技術力の持続的な強化を目的とする。また、任天堂はゲームソフトウエアの開発や移植を手がけるアメリカのShiver Entertainmentを子会社化した。豊富な実績を持つ開発スタッフをグループに迎え入れ、技術力の高い移植や開発リソースの確保を狙う。
会社の規模や経営計画によって各社M&Aの目的は異なるが、海外市場の開拓余地は依然として大きく、グローバル展開を見据えたIP創出とそのための技術基盤の確保を目的としたM&Aは今後も継続するだろう。
2025年の動向は?
2025年に注目すべき動きとして、日本テレビ系列の読売テレビ、中京テレビ、福岡放送、札幌テレビの4社の経営統合がある。2025年4月に認定放送持株会社「読売中京FSホールディングス」を設立し、経営統合される予定で、スケールメリットの拡大とコスト効率化を通じて、経営基盤の強化を図る。これら4社はいずれも黒字で政令指定都市のテレビ局である。広告収入が比較的潤沢な地方局を統合することで、財務基盤が一層強化され、読売中京FSホールディングスはM&Aの買い手としての存在感が増しそうだ。一方で、テレビ局や映画会社各社は、人材不足という共通課題に対して、各社各様の戦略をとっており、全ての会社がM&Aを優先して取り組むわけではないが、M&Aは引き続き有力な経営手法となりそうだ。
◎2024年コンテンツビジネス業界の主なM&A

文:M&A Online記者 髙橋さつき
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