フジ・メディアHDに憤りの書簡を突きつけたアクティビスト「ダルトン・インベストメンツ」とは?

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米アクティビスト(物言う株主)ファンドのダルトン・インベストメンツが、フジ・メディア・ホールディングス(HD)<4676>に抗議を込めた書簡を送った。第三者委員会の設置と信頼回復に向けた対応を強く求めた内容だ。ダルトンとは、どんなアクティビストなのか?

フジ・メディアHDに「憤り」をあらわにした文書を送付

ダルトンは15日に公開した文書の中で、男性タレントを巡る性加害騒動に対するフジ・メディアHDの対応を「私たちは今なお憤りを感じており、これ以上の株主価値の毀損を容認することはできません」と厳しく批判した。

7%以上を所有する大株主のダルトンは、適切に構成された独立の第三者委員会設置や発覚した事実への対処を明確にするとともに、すべての取締役が責任を負うことや再発防止に向けた具体的かつ実効性のある対策などを求めている。22日にはダルトンが再びフジ・メディアHDの「意図的な真相隠蔽」を非難する書簡を送ったことが明らかになった。

フジ・メディアHDの不動産事業売却を提案

注目されるのは「非効率なコングロマリット企業構造」の解決について2024年5月に提案していることだ。フジ・メディアHDはフジテレビやニッポン放送、ポニーキャニオン、扶桑社などのメディア・コンテンツ事業と都市開発・観光事業を経営の2本柱とする。

売上高こそメディア・コンテンツが2053億円で全体の74.5%と大きいが、営業利益は都市開発・観光が98億円と全体の65.6%を占める「稼ぎ頭」だ。都市開発・観光による収益の大半はサンケイビルと同社子会社の資産運用会社サンケイビル・アセットマネジメントによるもの。

ダルトンは2024年5月、同社に資産売却などのリストラに取り組めば企業価値の向上が見込めるとして、MBO(経営陣が参加する買収)を要求した。資産売却などのリストラを進めれば企業価値の向上が見込めるとして、会社を非公開化した上で放送事業に特化すべきだと提案している。

それによると、MBO資金はサンケイビルなどの保有不動産の証券化や持ち合い株の売却によって捻出することになっていた。

この提案はフジ・メディアHDによって拒否されたが、今回のタレントを巡る騒動で業績悪化が懸念されることから、ダルトンが2025年の株主総会で再度同様の提案をするとの見方が広がっている。

こうした憶測を受けて不祥事の最中にもかかわらず、同社の株価が上昇。22日は一時、前日比166円高の1989円に続騰した。

対話を重視し、自社株買いや買収反対などを提案

ダルトンは「対話(エンゲージメント)型ファンド」を自認し、企業経営者と投資家との対話を重視する。そのため同社による株主提案も多い。

最近では戸田建設に対してPBR(株価純資産倍率)1倍割れを理由に336億円を上限とした自社株買いを求めたが、同社は「内部留保資金は成長投資に優先して充てる。(自社株買いは)成長投資を円滑に遂行する上で適切でない」と反対を表明した。豊田自動織機やセコム、リンナイ、ハウス食品グループなどにも自社株買いを提案している。

一方で江崎グリコには配当内容を株主総会の決議で決められるように定款変更するよう求めたり、セブン&アイホールディングスにはカナダのアリマンタシォン・クシュタールによる買収に反対してセブンに分社化を促すなど多様な提案をしている。

ダルトンは14歳で投資を始めたというジェームズ・B・ローゼンワルド3世らが1999年のアジア金融危機後に、バリュー投資(株価が利益水準や資産価値などから判断して割安にあると考えられる銘柄への投資)ファンドとして立ち上げた。

同社は「優れたビジネスをもっているにも関わらず、本源的価値に対して市場から大幅に割安で評価されており、また経営陣と株主の利害が一致している企業を選定」しているという。

東京、香港、豪シドニー、印ムンバイ、米国のロサンゼルス、ニューヨーク、ラスベガスに拠点を置く。アジア企業への投資に強みを持ち、日本では約80社に投資する。2024年6月時点での運用総額は約43億ドル(約6700億円)。

文:糸永正行編集委員

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